『山口一郎のサカナクション解体新書』(2021/11/06)書き起こし

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イントロダクション

はい、始まりました。『サカナクションの解体新書』でございます。はいどうも、 YouTuberのサカナクション・山口一郎です。YouTubeを初めてやってます。どうみんな、調子いいかな?YouTube Live、今『SAKANATRIBE』を配信してたんですけど、2014年のライブですね。皆さん楽しんでいただけたでしょうか?どうだったかな。いい感じだったかな。いやちょっとあの、これ紅白直後のコンサートだったのかな?なので、なんか結構病んだ顔してたと思うんですけど、僕。でも今もうほんと元気いっぱいなんで。今も元気いっぱいでYouTubeとかやれるぐらいになってるんでね。あの、ばっちりです。で、今日は、今までInstagram Liveの方で新曲楽曲解説みたいなのずっとやってたんですけど、あのちょっとインターフェースと Instagramの相性が悪くなってしまって、それが出来なくなってきたので、ちょっと今日は大掛かりに、実験的なことも兼ねてね、YouTube Liveの方でやってみようと思ってるんですけど、これ音楽が大きいとかね、声が小さいなとかあったら、コメントの方で言ってくれれば見ようと思うんだけど、流れが速くて読めないな。流れ速いなあ。そうそうそうそう。まあでも大丈夫かな。なんでね、我々も初心者なんで、色々とアドバイスしていただけたらいいなと思っております。ということでね。来週の土曜日の9時からは『SAKANAQUARIUM光ONLINE』という、去年の8月かな?にやりましたオンライン限定、オンラインのためだけの生配信ライブ。それをライブ映像を配信することになってます。なので、そちらの方もね、是非皆さん見ていただけたらなと思うのと共に、今月の20、21日の二日間です。新曲を初披露する、新たなオンラインライブをサカナクションは開催するんです。すごいやつ。で、今着々とその準備をしてるんですけども、チケットはもうすでに販売されておりまして、結構実験的な配信ライブにまたなると思うので、ぜひ皆さんに見ていただきたいなと思うんです。内容的にも初めて披露する曲がまあ5、6曲あるのかな?5曲6曲ぐらいあると思うんで、今画像出てきたかな?『SAKANAQUARIUMアダプトONLINE』っていうのをやります。2021年の11月20日。あと21日の。画像もう1回出してもらえるかな?あ、出てる?あ、ラグがあるだけね。2021年11月20日11月21日の二日間行われますんで、是非楽しみしてただけだと思います。これね、全編生配信生ライブなんだけど、全編ほぼミュージックビデオみたいな、すごいことになるライブ映像配信だと思います。今まで多分ね、みんなが見たことないような表現になってると思うんですよ。今絶賛制作中なんですけど。これね、是非2日NFmemberっていうサカナクションのファンクラブの方は、是非2日通し券で見てもらいたい。内容は変わらないんだけど、これアップデートされるんで。見比べるっていうのもね、非常にサカナクションのこういうオンラインライブでやってる普通のライブに関しても非常に質が高いものになってるんでね、変化も楽しめると思うんでね、ぜひ見てもらえたらなと思ってます。これGo Toイベントが適用されて値段が安くなるんで、是非あのね、見てもらいたいと思う。リアルライブもいいんだけど、このオンラインライブを体験してからリアルライブを体験してもらうと、またよりね、すごい感動の種類が変わると思うんでね。ぜひ見てもらいたいなと思ってます。いいよ。で、どんなものになるかはね僕もよくわかんないんだけど。とにかく、よくまだわかんないね正直。わかんない、わかんないのよ。なんだけど、とにかく巨大なセットの中で、ライブと舞台が一緒に披露されるようなライブ、オンライン生配信ライブになります。で、女優の方も、女優っていうか女性の方もね、出演されたりとかして、ライブと演技みたいなものが混ざる、不思議な感覚になると思うんですよ。多分ね、世界でこんなことやってる人、まだいないと思うんで。一緒にね、こういう実験的なことを体験するっていうのも、非常に良いことだと思うんでね。音楽にとって大切なアクションだと思うんで、ぜひ見てもらいたいと思う。どんなものになるか、ほんとわかんないんだよね。わかんないことがいいなーと思って。なんか『こうなるよね』みたいなことが想像出来る事って、大して面白くないじゃないですか。やってる我々もワクワクしながらやるけど、どうなるか、みんながどう思うかもわかんないことっていうのって、一緒にその体験を共有できることになると思うから、一緒に感想も聞きたいし、一緒にそういう瞬間をね、味わってもらえたらなと思っております。です。でまぁ今回この『アダプト』って何なの、っていうのって結構いろんなところから聞こえると思うんですけど、『アダプトONLINE』でまず我々は新しい曲を披露します。新曲をね。タイアップとかになってる曲とかもシングルで出してなかったりしてたのは、ここで初めて初披露するためだったんですね。で、『アダプト』っていうアルバムっていうかミニアルバム、ハーフアルバムみたいなものが来年3月に発売されるんですけど、それと『アプライ』という新しいプロジェクトも、『アダプトプロジェクト』の後にスタートします。なので、2枚で1枚のアルバムになるのかな。そう、今見ていただいてる感じ。オンライン配信、公演があった後にツアーがあって、アルバム作品リリースという、普通だったらアルバムリリースしてツアーしてオンラインライブっていうのが定説なんだけど、それを全く逆にすることによって、新曲の捉え方、新しい曲の体験の仕方みたいなのは変わるっていう思考になってます。なんかこう、あのみんなもうショックに飢えちゃってるからさ。慣れちゃってるから。新しい曲が配信されるのもYouTubeでミュージックビデオが流れて、サブスクで新曲聴いて繰り返し聴いて、みたいな状況じゃないですか。そうじゃなくて、オンラインライブで初めて新曲を聴くっていう体験って、あんまりしたことないと思うんで。しかもちゃんとミュージックビデオのように演奏された楽曲をね。だから、そういったちょっと皆も受けたことがない感動だったり衝撃を、音楽で生み出すにはこういう手法がいいんじゃないかなっていうことを、コロナ禍に来週放送される『光ONLINE』もそうですけど、その後やった『NF FROM LIVING ROOM』って、僕のこの部屋からね、まさにここですよ。ここから配信したライブだったりとか、そういうことをやった上で、いろいろ感じたことを全部この『アダプトプロジェクト』、そして来年以降スタートしていく『アプライプロジェクト』。この二つで表現してきたいなと思ってます。なんで、どちらかと言うと『アダプト』は『適応』していくための作品で、『アプライ』っていうのは『応用』していく作品になるんで、楽曲的な暗さで行ったら『アプライ』の方が、すごく暗いアルバムになるんじゃないかなと思うんですけど、まずこの『アダプトONLINE』だったりを体験した上で、『アプライ』の方を来年また体験してもらえると、ちょっと色んな印象が変わるんじゃないかなと思うんでね。その辺をちょっと楽しみにしていただけたらなと。是非チケットも販売されてますんで、是非購入していただけたらと思います。で、リアルツアーの方も、正直今音楽業界のライブの動員が、ぐっと減ってるんですね。で、正直結構厳しい状況になってると思う。で、コロナでやっぱりライブを体験したことがない10代の人たちがやっぱり大量に生まれてるんですよ。なので、ライブっていうものの価値みたいなものも問われ始めるかなと思っていて、リアルライブの方も音響であったりとか演出とかを、そのコロナに適用したような形でやっていきますので、それもね楽しみにしていただけたらと思います。で、チケットはもう絶対当たると思う。あの、売れてない全然。正直。オンラインライブも全く売れてないです。正直、全く売れてないんですよ。やばい(笑)。オンラインライブ、前回『光ONLINE』の2倍近い価格なのにもかかわらず、チケットはもうほんと売れてないから、ちょっと是非皆さんご協力お願いします(笑)。なのでね、慌てずに余裕がある方はね、チケットを購入して見ていただけたらと思います。宜しくお願い致します。で、今日はどういうことやってくかって言うと、サカナクションの『sakanaction』ってアルバムがあって、それを前回のライブ配信かな?ライブ映像配信で解説しようと思ってたんですけど、ちょっと機材トラブルで、急遽父親との対談っていうふざけた回になってしまったので、今回ちょっと真面目にサカナクションの『sakanaction』の解説をしていこうかなと思ってます。で、今回。今日放送したライブもですね、の中にもやった曲も多数入っているので、ちょうどいいかなと思いますので、ちょっと解説してこうかなと思いますね。では早速ですけども、このサカナクションの『sakanaction』ってアルバムはどういうアルバムかっていうのをちょっと解説していく上で、これは6枚目の……6枚目のアル……ん?6枚目か?
スタッフ)7枚目です。
7枚目か。7枚目のアルバムになってます。……6枚目でしょ?6枚目って言ったじゃないのよ最初に(笑)。6枚目って言ったじゃないのよ。
スタッフ)6枚目です!
(笑)。6枚目のアルバムになっていて、自分たちのバンド名をアルバムタイトルするぐらい気合い入った作品なんですが。これね、実は自宅で作ったんですよ。僕の当時住んでいた自宅で制作すると。要するに下北沢に住んでた時なんですけど。『下北沢の自宅で作ったものが、日本全国に広がっていってる』っていうコンセプトで、『家の中で作り上げたものを広げる』ってコンセプトで作り始めたアルバムなんですね。なので、非常に作品的にもタイアップ曲も何曲か入ってましたし、僕ら的にもこの時やりたいと思ったことを、外にも向けて作りながら内にも向けて作るという、非常にバランスがとれた集大成的なアルバムになったと思います。なので、このアルバムのツアー……紅白出たのもこの年かな?なので非常にサカナクションが知られていくタイミングになった曲なんじゃないかな、と。ちょっと思ってますね。

01.intro

なのでちょっとそれの解説をしていきたいと思うんですが、今裏でこっそり流れてるのは、サカナクションの「intro」。1曲目ですね。どういうコンセプトでこの「intro」作ったんだっけな。これはちょっとあんまり覚えてないな。なんかあれだ、バイノーラルに凝ってたんだこの時ね。バイノーラルを使ったサウンドメイキングをしようっていうコンセプトで、「intro」を製作していったんですね。で、この後流れてくるのが、「INORI」という曲。早速「INORI」という曲から聞いていきましょうか。解説してくよ。じゃあ、このまま「INORI」という曲に行きたいと思います。

02.INORI

2曲目。インストですね。これはインストっていうのかな?ちょっと聴いてみましょう。
今聴いていただいておりますのは、サカナクションで「INORI」という、まあダンス・ミュージックですね。ライブの1曲目に行われた曲なんですけど。これはね、AOKI takamasaさんという方と一緒に制作して。テクノのグルーヴっていうものを、それを普段ちゃんと作られてる方と一緒にやってみることで、自分たちの体にちゃんと馴染ませるという、そういう通過儀礼的なね意味合いもあって、この「INORI」という曲をサカナクションAOKI takamasaさんと二人で、二チームで作りました。で、当初「INORI」って歌詞があったんですよ。今これ『らーららららー』で『ららら』だけなんですけど、『じゃあ歌詞書いてきます』って言って、僕が歌詞書いてきたんですけど。「INORI」っていうタイトルで、『何にも言わない』……違う、『何も言えない 言えない この祈りは』っていう歌詞だったんだよね。だったらもう何も言わなくていいんじゃないか、ってことになって、『らららららら』にしたんですよ。でもなんかその……なんて言うのかな。我々、僕ステージの上に立ってて、よくね、雑誌のインタビューとかで訊かれるのよ。『ステージの上で一体何を考えて歌われてるんですか?』っていう質問とかって、ミュージシャンは一回はされるんだよね。で、その答えって、なんか結構曖昧だったんですけど。僕的にはね。なんだけど、一つ答えが出たのは、『ステージの上で僕は歌いながら祈ってるんだ』っていう。祈ってる感覚に近いな、っていうことに気づいたんですよ。だから、それを「INORI」として、この「INORI」というインスト曲を作り上げていって、形にしました。どこかなんかこう、楽曲的にはすごいこう西洋のものだけど、テクノのこのグルーヴって。だけど、どこかこう和太鼓っていうか、雅楽のグルーヴもちゃんと取り入れられてて、非常に「INORI」というタイトルにしっくりくる作品になってるような気がしますね。
前半部分がサカナクション担当だったのね。「INORI」の前半がサカナクション担当で、後半がAOKIさん、AOKI takamasaさん担当だったの。だから、前半サカナクション節、後半AOKIさん節って感じなんだよね。だから、それで聴き比べると結構わかるんじゃないかなと思う。僕ら的にも、非常にこのAOKIさんとのクリエイティブは勉強になりました。で、AOKIさんのリミックスしてる「映画」っていう曲のAOKIさんリミックスとかもね、シングルのカップリングとかに入ってるんで、そういうのもね、配信されてるんで是非聞いていただけたらと思います。そうなのよ。前半サカナクションなのね。この時でも何聴いてたっけなー。スティミング*1か。スティミングっていう、オランダのミュージシャンでしたっけ。オランダかドイツのミュージシャンだよね。スティミングをすごい聴いてて、そのグルーヴを何かこう一生懸命研究して、勉強してたのを覚えてますね。これエジ*2がでも基本的にはやったのかな。エジとAOKIさんでやってたんだよね、基本的にはね。エジも当初はなんか『DJとか絶対やらない』とか言ってたのに、今じゃもうDJ大好き人間になっちゃったんだよね。でも僕が江島に言ってたのは、『これからのドラマーは、ちゃんと自分でプログラミング*3できなきゃダメだ』と。『生で叩くだけじゃなくて、自分でちゃんとグルーヴをプログラムで作れないとダメなんだよ』っていう、『ダメじゃねえか?』っていうのを、セカンドアルバム*4ぐらいの時に札幌で言ってたんですよね。そこからエジがパソコン買って、ロジック*5やり始めてみたいな。で、皆も同時にそれをやり始めて自分たちで制作していく、みたいな雰囲気になってったんじゃないかなぁと思います。流れ的にはね。ていう曲でした。

03.ミュージック

「ミュージック」という曲を皆さんと一緒に聴きましょうかね。これはちょっと歌詞出してもらえますか?非常にこの曲は、家で作っていた時に、最後の『振り返った季節に立って 思い出せなくて嫌になって』の部分は、そもそも存在してなかったんですよ。この『消えた 消えた (カワハナガレル) 消えた (マダミエテナイ マダミエテナイ)』のところだけが実はサビだったんだよね、浦ちゃん*6。覚えてる?で、これがドラマの主題歌になったんですよ。それでドラマの主題歌にする上で、ちょっとパンチがないよねっていう。『これだけじゃ物足りないよね』っていうので、最後の『振り返った季節に立って~』の部分を付け足したんだよね。なんかその場で僕がギター弾いて歌ったんじゃなかったっけ、確か。で、それをバンドで合唱にして、なんかこの時期合唱好きだったよね。なんかその合唱みたいな、ロックの曲に合唱を入れることで、どこかこうキャッチーなロック感みたいなものを、サカナクションの一つの売りにしようっていうか、技にしようっていうので、バッハの時からかな?考えていて。この最後の部分でエモさを出すっていうのでやってたんですけど。歌詞を書いてく上で、最後の部分って実はAメロBメロ1番2番で言ってることを全部回収する歌詞にしなきゃいけないと。それで、結構苦しんで書いたんですけど、非常に僕的には、良い歌詞が書けたんじゃないかなと思ってます。この『流れ流れ 鳥は遠くの岩が懐かしくなるのか 高く空を飛んだ』、いい詩ですなあ。『誰も知らない 知らない街を見下ろし 鳥は何を思うか 淋しい僕と同じだろうか』。北海道から我々出てきて、なんかこう人に知られていくっていうことと、なんかその郷愁っていう部分ね、自分が知られていくことによって、本来の自分から遠くなっていくっていうね。そういう歌詞だったんだよね。で、これあんまり愛美ちゃん*7って、ベースのね。歌詞を褒めてくれないんだけど、この曲はね、愛美ちゃんが歌詞を褒めてくれたんだよね。この曲だけじゃないかな?今までで。あんまり言わない、言われなかったことだから嬉しかった。北海道の立場の我々の歌にしたから。しかも、僕の私小説じゃなくて、サカナクション5人の私小説っていう部分で書いた歌詞だったんで。だから、全員が共感できるものにしたかったんで、非常にそれを言ってもらえた時は嬉しかったですよね。だから2番とか、『濡れたままの髪で僕は眠りたい 脱ぎ捨てられた服 昨日のままだった 何も言わない 言わない部屋の壁にそれは寄りかかって だらしない僕を見ているようだ』。素晴らしいですね。『痛みや傷や嘘に慣れた僕の独り言 疲れた夜と並び吹く風 君の頬へ 触れた 触れた (ヨルハナガレル)』、いいですね。よくできてる歌詞だなと思います。で、これ頭のシンセとかも結構繊細にすごい作った思い出がありますね。これミックス的には、後半の最後の『振り返った季節に立って~』のところがボリューム的に一番マックスに来るんだけど、頭のパンチも欲しいから、ちょっと下がっていってるのかな?少し頭のボリュームを頭の全体のマスタリングは……ミックスボリュームか。ミックスボリュームは前半ちょっと突いてる*8けど、どこかで少し下がっていって、最後の『振り返った~』のところで一番突かれてボリュームが一番でかい感じになってると思ってるんだよね。そういう繊細なこととかも、実は全曲やってるんでね。もう聴いてみましょうか。では「ミュージック」、聴いてみましょう。
頭のシンセもこれ一発じゃないんだよね。何色か混ぜてる。2色の音を混ぜてる。プロフェット*9だよね、確か。プロフェットも使ってるんだよね。これモッチ*10がフルコーラスで入ってる。
ここの、この瞬間が美しくなければこの曲は魅力がない、っていうので、めちゃめちゃ繊細にやった気がする。この木琴っぽいやつは、愛美ちゃんがアレンジして入れたんだよね。これなんか「チーム・ミー」って曲の何か入ってる音色とか参考にしてたよね。ここのドラムは、結構歪ませて録音されてるよね。これってここの部分だけで別録りしてるんだよね。ここは結構フレンチハウス的なギターのアプローチもして、グルーヴ的にはそんなディスコって感じじゃないけど、ハウスになりすぎないようにしようね、っていうね。気をつけたのは。ここベースだけか。ほぼベースとドラムだけ。ここで間奏を入れたのは結構秀逸な構成だったね。この『(ヨルハナガレル)』は江島とモッチがコーラスやってるかな。ここは、1番の歌詞2番の歌詞をどんどん回収していくラスサビメロディー。これはもう本当に最後の最後に付け足したんだよね。このね、『歌い続けるよ』っていう歌詞って、先日新曲のレコーディングで歌詞書いた時にもなんか議論があったんですけど、結構勇気がいる言葉っていうか。なんかその、30代中盤ぐらいまでは『歌い続けるよ』って言っても許される説(笑)。なんか40になってから『歌い続けるよ』っていうのって、なんか嘘臭く感じるよね、みたいなニュアンスのことを、こないだ浦本さんとかと話してて。だから、やっぱりこの時にしか歌えなかった『歌い続けるよ』っていう説得力のある言葉なのかなって思うんですよ。だから今回もそういうニュアンスの歌詞の部分を作るかっていう話はあったけど、やめたんだよね。だから、やっぱりね。年齢によって結構歌うこと変わってくなっていうのは切実に、やっぱりリアルに感じてるし、その変化をやっぱり適応してかなきゃいけないのと、楽しまないと面白くなくなってくるだろうなとか、摩耗していくだろうな、って気はしてます。それはもちろん、新曲を作ってどう届けるかっていうこととかも含めてね。だから、シングルを出してアルバム出してツアーやるっていうことって当たり前なんだけど、その範囲でしか表現できないことってやっぱりすごいあるなと思って。だから、やっぱりやり方を変えて、伝え方を変えることで、作る曲も伝え方も変わっていくっていうのは、僕らだけじゃなくて、見てる人もやっぱりワクワクするじゃないかなって気はちょっとしてるよね。だから、今回アダプト計画はそういう形で、ちょっと違った取り組みにしてるんで、是非皆さんチケット、ONLINE NF……じゃねえや、SAKANAQUARIUMアダプトONLINE、11月20日21日の二日間是非見て頂けたらと思います。とんでもない配信ライブになるんでね。じゃあ今は3曲目ですね、「ミュージック」。

04.夜の踊り子

じゃあ次は4曲目。「夜の踊り子」ですね。これはいい話いっぱいあるね。ちょっと歌詞出してもらいましょうかね。「夜の踊り子」はあのね……まずテーマは『大正』だったんだよね。『伊豆の踊子』の世界観だったけど、『はいからさんが通る』って皆知ってるかな?『はいはいはい、はいからさんが通る~』っていう、漫画。あの時代の世界観が、僕は大正だと勝手に思ってたんだけど。よくわかんないんだけど。そのなんかこう、はいからさんの幼少期の物語みたいなことを、ちょっとテーマにしようかなっていう風に思って、書いていた曲ですね。で、そのグルーヴとしては、結構ツッコミ気味のスクエアなバキバキなグルーヴで全体的に構成されてくんだけど、これも実は『どこへ行こう どこへ行こう ここに居ようとしてる?』っていうBメロがサビだったの。そういう曲だったんだけど、なんか物足りない、ってまたなって。これ僕ら『物足りない症候群』って呼んでたんだけど。これも、その場で僕が、ギターでメロディをバーってギターで弾いて、すぐその場で作ったんだよね。あの新大久保のフリーダムスタジオだったよね確か。アライブか、アライブスタジオか。祐天寺のアライブスタジオで、その場でバッとサビ付け足した。だから、最後の最後だけサビが来るっていう、別に焦らしたくて焦らした訳じゃなくて(笑)。なんか『焦らし曲だ』って言われるけど、そもそもこういう曲だったっていう。これでもあの東進ハイスクールじゃなくて、何だっけ……モード学園のCM曲で、これも本当ね、話していいのかな(笑)。ジョンテ・モーニング*11さんが……やめといたほうがいいか。やめとこうか。ジョンテ・モーニングとなんかいろいろ問題が(笑)。そうなんですよ、仮歌詞が欲しいみたいな話になったんですね。で、僕、仮歌詞を書くのが本当に嫌いな人だから。それで、最初「YELLOW」ってタイトルだったんだよ。『雨になって~』のところが『イエローイエロー~』だったんだね。それはいつの間にかどこか行ってしまったけど、「YELLOW」ってタイトルだったの最初ね。で、歌詞を書いていったと。『跳ねた跳ねた 僕は跳ねた 小学生みたいに』って、なんかこのグルーヴに対してなんか跳ねて小学生みたい、『雨上がりの夜に跳ねた 水切りみたいに』ってちょっとこうなんか古風な感じがしないかな?僕はなんかちょっとそういう感じがしたんだよね。で、『明日を素通り』と。『朝を素通り』、いいですね。で、『跳ねた跳ねた 君も跳ねた 女学生みたいに』って言い方が、その昭和初期、大正の匂いがするよね、『女学生』って言い方がね。そこの匂いがちょっとふわっとするし、楽曲のアレンジもそれを増長させていると。『水たまりの上で跳ねた あめんぼみたいに』、ここも童謡感があるんですよね。童謡感がなおさらその古風な感じを増長させてると。すごいいい言葉のセレクトだと思います。で、『それはつまり 夜に逃げただけ』と。頭の中の言葉と自分の現状をこう行ったり来たりして、っていうのを表現してますね。で、『どこへ行こう どこへ行こう ここに居ようとしてる? 逃げるよ 逃げるよ あと少しだけ』。これはモラトリアムから、大人になるということから脱却する、大人になりたくない!、そういう感情がここに込められてるね。それで、次に2Aかな?『消えた消えた 君が消えた 蜃気楼みたいに にわか雨の音も消えた さよなら言うように』と。『聞こえたフリして 君の言う通り』。大人になっていく上での情景描写みたいなことを、この辺は歌詞にしてますね。で、『どこへ行こう どこへ行こう ここに居ようとしてる? 逃げても 逃げても 音はもうしなくて』。『にわか雨の音も消えた さよなら言うように』と。言っておいて、サビで『雨になって何分か後に行く』。これは秀逸ですね。『今泣いて何分か後に行く 今泣いて何分か後の自分 うぉおおお うぉおおお』ですから。これね、『雨になって何分か後に行く』って、何が素晴らしいかって、意味も面白いしリズムもいい。雨になって、何分か後に行く。いいよね。で、またBメロ『行けるよ 行けるよ 遠くへ行こうとしてる イメージしよう イメージしよう 自分が思う方へ』。この『イメージしよう』っていうのを、ここで初めて持ってくる訳よ。その現代的な表現をね。これは非常に僕は迷った。ここで『イメージ』っていう言葉を使うか迷った。けど、なんかこうはっきり分かりやすいことをここで言うっていうことも、まあサビ後のBメロのリフレインなので、必要だと思ってこれを選択したけど、これは結構僕にとっては勇気のいるわかりやすいワードっていうか、ちょっとこっぱずかしいレベルの部分ですね。すっごい恥ずかしい部分です。で、『雨になって何分か後に行く』と。『今泣いて何分か後に行く 今泣いて何分か後の自分 うぉおおお うぉおおお』。『今泣いて何分か後に言う』。ここで『言う』に変わるわけ。今泣いて『何年』、ここで『何分』が『何年』に変わって、『何年か後の自分 うぉおおお うぉおおお』で、『笑っていたいだろう』と。最後に投げかける。投げかけ作戦(笑)。これね、非常によく出来た曲だと思います。それではちょっと、それを経てね、聴いていきましょう。「夜の踊り子」。

このグルーヴは非常にいいですね。ちょっとどこか和の感じがするよね、この『パパパパン、パン』ってシンセのフレーズと音色が。この時は結構言葉を詰めてる歌詞が多いよね。この時はね。これ結構ゴールド・パンダ*12の楽曲を参考にした思い出があるよね。肩今四十肩なんだよね。やっぱこのシンセの『パパパパン、パン』が全てを物語ってるね。世界観をね。そうだ、この『ウォウウォウ』の言い方は、ぶっきらぼうに言おう、ってことにしてたのよ。聞いて。ぶっきらぼうでしょ。子供っぽくっていう。最後のサビは、『マリオがスターを取った時の感じ』、要するにガラッと変わるっていう。ここまだ生ベースなんだけど、こっからベースシンセに変わることで、低音の種類が変わるからよく聞いといてみて。ここ『マリオがスターを取った』ってイメージね。そうすることによって、ライブでもここから低音が一気に広がるから、ステレオでガンッと。だから、曲中としても、ライブとしても成功したんだよね。だからその分その低音の性質をすごい細かく繊細にやらないと、聞こえすぎたり聞こえなすぎたりするから、そこは結構毎回センシティブにやってるところかな。ここはまだ生ベースだよ。この後スター取るから、ベースの低音がワイドになるから聞いといてみてください。これモッチの『テロレンテロレン』がコイン取ってるみたいでしょ。

あのね、低音っていうものの存在って、非常に曲の中では大事なものなんですよ。で、特にライブでの低音の存在感っていうのは、曲全体の重厚感に関わるものだから、ここが疎かにしてると、曲全体のレンジが上がってしまうんですよ。そうすることによって、聞こえてはくるけどエネルギーがない、要するに質量が少なくなるんですよ。で、もちろんバンドの、例えば4ピースの普通のギターロックバンドとかだと、そこまで低音が要らないっていうような気がするんだけど、実はそういうことじゃなくて、低音っていうものを感じるか感じないかによって、高級感であったり、パワーみたいなものが、やっぱり足りなくなってくると。それはどんなに良い音楽を届けていても、伝わりにくいものになるから。だから、フェスとかに行くと、スピーカーシステムっていうのは自分たちのものではないんですよ。フェス側が決めたスピーカーシステムで鳴らすから、ウーファーが入っていない。ウーファーっていうのは、低音だけ鳴らすスピーカー。つまり、田舎のヤンキーの車の後ろに積んであるやつね。『ヴヴ、ヴヴヴ、ヴヴ、ヴヴヴ』って、なんか音が漏れてくるじゃない。あの低音。あの低音だけ出るスピーカーがある、多いフェスと少ないフェスでは、全然表現が変わってくるんですよ。で、我々のライブでは、ウーファーっていうものを、もうこれでもかってくらい足してるんですよね。それはなんでかと言うと、その出したい部分と出さない、出さないでおく時と出す時との差で表現をしてるんで、それがないと表現しきれない。そういう性質があるんです。だから、我々はウーファーを足してると。フェスとかでそれを出す時には、 PAってパブリックアドレス、PAの方たちがですね、コントロールして出してもらうっていうね、非常に重要なものになってます。でもね、最近その低音もあんまり意識してないミュージシャンが多いなーって気がするんで。むしろ、低音出すと要らないって言われると言うか。要するに『ドンシャリ』って言うのかな。ドンシャリの音に慣れすぎてて、ライブ本来の楽しみ方みたいなものが、やっぱり変化しつつあるのかなっていうのは、ちょっと僕ら世代からすると悲しい現状な気がするね。でも、本当はそこがないと、僕たちにとってライブじゃないっていうか、そんな感じがしてます。なんですね。まあ、そういう話をしてきました。じゃあ次の曲いってみましょう。このペースで行くと結構遅くなっちゃうから、もうちょっと早く行った方がいいかな?僕もこの後歌詞やんなきゃいけないんだよね。楽しいから。喋るのは。うん。

05.なんてったって春

よし、次いこう。「なんてったって春」。この曲はね、非常に素晴らしい曲ですね。ちょっと歌詞出してもらおうかなと思いますね。これ、「なんてったって春」っていうのは、僕が東京に出てきた時に、東京の春と北海道の春って全然違うよね、ヤス。ね?だから、春の違いみたいなものをちゃんと表現したいなと思ってた曲です。で、サウンド的には当時90年代リバイバルサウンドメイキングが世界的に流行り始めたかな、ぐらいの時だったんですね。で、僕はそのムーブメントが必ず来るって読んで、そういうサウンドをちょっとサカナクションのアルバムに入れたいって言うので、作り始めました。けど、あんまり流行らなかったね。けど、僕的にはなんかすごいこの80年代を消化した後の90年代シンセサイザー……その、ディープ・ハウスとは行かない、その気持ちいいファンク・ディスコ・グルーヴの匂いがする、ミニマル・ダンス・ミュージックみたいな感じかな。それをちょっとチャレンジしたという感じですね。曲ですね。これすごい曲ですよ。『今年始めの春の雷がサヨナラ告げた 風 風 きっと吹くな』。あぁ、松本隆さんみたいですね。『君はスカートの裾を気にしながら駅に消えた 風 風 きっと吹くな』。これ下北沢の西口ですね、の歌詞ですね。『明日は雨予報 立ち尽くしてただけの僕の傘 杖のように固まった』。で、これここからすごい。サビ。『南南西から吹く風*13 なぜか流れた涙 なんてったって春だ』。種田山頭火のようだね。これをメロディーで、この言葉を出せたっていうのは、非常に僕的には素晴らしい歌詞ができたなと思いましたね。『南南西から鳴く風 なぜか流れた涙が 多分春だ』。もう涙自身が春だと、言ってるわけです。『なんてったって春だ』『多分春だ』。いいですね。『今年二度目の春の雷で早歩きした』、1年経ってます。『雨 雨 きっと降るな』。1年じゃねえや、日にちが経ってます。『歩き慣れた道 横目で見た赤いツツジの花 おもむろに揺れたんだ』。なんか北海道であまり春先に真っ赤な花が咲いているのを見たことがなくて、それにちょっとびっくりしたんですよ、僕。それで、それを歌詞にしたんですね。で、ここから繰り返しですね。で、最後。『だんだん君は大人になっていった 流れた涙 なんてったって春だ だんだん僕も大人になっていった 流れた涙は多分春だ』。春の情景描写から、心象風景に変わっていくんですね。これも非常に、非常に素晴らしい歌詞だと思いますね。それではちょっと、その世界観を堪能してもらいましょう(笑)。「なんてったって春」、聴いてください。

これ低音シンセね。生ベとはやっぱり違った低音感があるね。このシンセの音色で、時代感が出てるんだよね。いやあ、非常によくできた歌詞のリズムとメロディーのリズムですね。なってますね。これ結構2Aで変化しないっていうことって、実は結構勇気いるんですよ。だからこれは歌詞を信頼されてるっていうことなのかなと、思いますね。この裏でちょっとスウィングしてるローズ*14の音色、ローズのこの感じめちゃくちゃいいですね。ミックスもすごい、素晴らしい。で、ここから、歌詞の世界観というか、ちょっと青春の壊れた感じがアレンジで表現されていると。その前兆がここにあると。だからここのアレンジは、結構ダンス・ミュージック的要素のアレンジになってるかな。この辺はなんか、マイロ*15って覚えてる?19……2000年初期か。にロンドンで新星のように現れたマイロっていうトラックメイカーがいたんだけど、その辺のアレンジにちょっと近いよね。これ最初タイトル「ナイトライダー」じゃなかった?仮タイトルね。仮タイトルは確か「ナイトライダー」ですよ。今コメントにあったけど。

そうそう思い出した。「ナイトライダー」っていう仮タイトルで、最初。歌詞が付く前やってましたね。なんか、その辺の……あれでも「ナイトライダー」って80年代のドラマじゃなかったかな?あの辺の感じが、なんか我々にとっては90年代初期の雰囲気になってたのかな。その辺もなんか、時代のギャップが結構面白いですね。「ナイトライダー」っていうのは、しゃべる車ですよ。今で言ったらテスラです(笑)。テスラみたいなやつですね。

06.アルデバラン

じゃあ、その次。これ次は「アルデバラン」っていう曲ですね。これはあの、何だったかな。ちょっとファンキーな感じの「涙ディライト」っていう僕らの曲があるんですけど、それの系譜となる曲だったかな。で、何故か僕がこれに、猫の歌詞を……「アルデバラン」っていう猫の話。だから、ちょっとみんなのうた風にしよう、みたいな感じだったのかな。結構僕的には冒険的な歌詞だった気はしますね。猫の話ですよね。ちょっと歌詞出してもらえるとありがたいんですけど。何だったかな。これ僕ね、あんまりこの時のストーリーを覚えてないんですけどね。「アルデバラン」っていうリールがあんのよ、シマノの(笑)。シマノのリールがあって、そのシマノの「アルデバラン」っていうリールが欲しかったんだよ。ずっと『スコーピオン』だったから。釣り好きの人はわかるかな?あの「アルデバラン」というのは、もうベイトリール*16の中での最高峰に近いやつなのね。興味ないでしょ、皆。なんだけど、その一個ランクの低い『スコーピオン』っていうのを僕は使ってたんだけど、「アルデバラン」を欲しい。そういう『シマノアルデバランが欲しい!曲のタイトルにしたら貰えるかも!』(笑)。浅はかな思いから作られたのかもしれないね。「アルデバラン」ね。今じゃ僕、「アルデバラン」持ってますからね。『アンタレス』ですよ今は。『アンタレス』はさらにいいやつですね。さらに良いリールを持つようになった(笑)。そして、「アンタレスと針」っていう曲もありますから。そこには『スコーピオン』っていう歌詞が出てくる。本当に、こまめにシマノの釣り道具の名前が曲に入ってくる。「アルデバラン」。『シャウラ シャウラ*17っていう。『シャウラ』もあるからね。『シャウラ』もリールですよ。あるんですよ。あれ竿だっけな?リールか。『ワールドシャウラ』。『シャウラ』もね、シマノの釣り具の名前です。で、これは「アルデバラン」っていうリールの……違う!猫のお話ですね。ちょっと聴いてみましょうか。『じっと僕は待つの 汚れたアルデバラン しっぽ振って今日も現れるだろう』。みんなのうた風にしようとしたんだよね。『人 人 人 また人 通りすぎる街で きっと何千回も鳴いたはずだろう じっと僕は待つの 汚れたアルデバラン しっぽ振って夜に現れるだろう 人 人 人 また人 通りすぎる街で きっと何千回も泣いたはずだろう 明ける 明ける 猫の物語 僕は見ていた 明ける 明ける この物語 忘れた頃には じっと僕は待つの 悲しみアルデバラン しっぽ立てて今日も鳴いているのか 人 人 人 また人 通りすぎる街で きっと何千回も歌われただろう 明ける 明ける 猫の物語 僕は見ていた』これはいい歌ですね。なんかこう、みんなのうたチックですね。そう、村田基*18ですね、うん。村田基って言って分かる人は相当な釣り好きですけどね(笑)。じゃあアルデバラン聞いてみましょう。これもグルーヴ的にはもうファンク、ファンク・ディスコだと思います。

これね、あのね、思い出してきたわ。多摩川の近くに住んでた時に、黒猫……黒い野良猫が、毎日家に来てたんですよ。で、良くないことかもしれないんですけど、僕は毎日餌をあげていて。その猫が子猫を連れてきたりとか、母親を連れてきたりとか、結構ドラマがすごいあったんですよね。で、野良猫っていう存在って北海道だとあんまり居なくて。冬が越せないからね。そんなに見かけないと。で、東京の多摩川沿いには本当に野良猫がたくさんいて、なんかそこの事がこの曲に歌われてるんですね、確か。これコーラスモッチだよね、確か。こういうコード展開は本当、愛美ちゃんっぽいよね。これ愛美ちゃんがデモを作ったかな。これね、エレピです。

聴いていただきましたのは、サカナクションで「アルデバラン」という猫の曲です。珍しいかな?でも今書いている新曲もですね、猫が物語になってる曲があるかな?『ビールを飲んでみようかな』って曲があるんです。デモですけどね、まだ。それも猫のお話になる。だから、僕は猫派なんでね。猫大好きなんで。猫の曲が多くなっちゃうかな、って思ってますよ。でもまぁ、曲としてはカーディガンとか確か参考にしてた気がするな。カーディガン。カーディガンズ*19カーディガンズとかを結構参考にして、この曲やってた気がするね。そんな感じしますよね確かね。めちゃくちゃ聴いてた気がする、あの時。だから、どっちかって言ったら、ちょっとグルービーなところだったかな。カーディガンズ、やっぱりめちゃくちゃ今聴いてもいいよね。再結成してるんじゃなかったかな?してないっけ?何かやってる気がするんだよな。

07.M

じゃあ次の曲いきましょうか。次の曲は「M」という曲でございます。これは、あの……ちょっと歌詞出しててもらえたら嬉しいな。なぜ「M」かというと、このアルバムで最も最後にできた曲なんだよね。本当にもう明日納品しなきゃいけないみたいな時に、246車で走って焦ってる思い出が僕あるんだけど、景色として。歌詞をまだ出来てないけど、クレジット表記のためにタイトルだけ決めなきゃいけないって言って、仮タイトル「M」だったのを、そのまんま曲タイトルにしちゃったっていう、『間に合わなかった曲』(笑)。なんだけども、あの、皆さん。神様はいる。この「M」をよく見てください、よく見て。後で話そうかなこれ。この曲は、北海道の僕住んでた時にすごく仲良かった小学校の頃仲良かった女の子がいて、その子が海沿いの近くに商店をやってる、実家がね、お家あったんですよ。で、そこによく遊びに行ってて、その子のこと僕大好きだったのよ。けど、5時になったらバイバイしなきゃいけないじゃないですか。それがすごく悲しくて、なんかこう、5時の、5時になると音楽が流れるじゃないですか。あれが鳴るのがすごいやだなーって思ってた時の事を歌にした曲ですね。で、海沿いだとね、カモメが飛んでたと。だから、「M」という字をよく見てください。よーく見てください。よーく見て、カモメに見えません?「M」がカモメが飛んでるように見えないですか、あれ。カモメでしょ。「M」はカモメなんです。カモメです、これ(笑)。歌詞に出てくるカモメが、なんと飛んでたと。タイトルに。そういうことにします。「M」はカモメです。この曲はカモメだと思ってください。これはザッキー*20が担当した曲かな?最終的にメンバーみんなで引き取ったけど、全体的な雰囲気を構成したのはザッキーがやったって感じの「M」、聴いてください 。

これね、よく聴いてもらったらわかると思うんだけど、ボーカルのレベルがすごい小さいんだよね。他の曲に比べて。すごい引っ込んでると思う。これはね、すごいレトロな感じがするよね。この後ろで流れてる『トゥルルルルル トゥルルルルル』ってシンセが、なんかすごい『ドラゴンボール』みたいだねって、ザッキーがデモ作ってるときに言ったよね。でもなんか、サビ前にホーンが入ったりするこの感じは、フレンチ・ハウスのバッファロー・バンチ*21とか、あの辺の感じが出てるのかなと。当時我々がすごい好きだったね。ここのタムなんで入れたんだっけ?よくわかんない(笑)。なんでここにコンガ入れたんだっけ?わかんないよね。あとね、僕の曲って、サビが繰り返されることが多いんですよ。一番と二番のサビがちょっと違うとかはあるけど、基本的には同じサビを使うと。なんでかって言うと、時間軸が違うことで、サビの言ってることが違うと、結局全部が言ってることが変わるっていうのが嫌だなっていうのと、まずサビはこれ、っていう結論はもう言っちゃってると。だから、さらに押しで言わなきゃいけない時以外は僕はサビは基本的に変えない。これでも洋楽的思考なのかなって思うんだけど、そういう……なんか癖と言うか。あんまり説明したくないっていう意味もあるのかなあと思う。すごいだからやっぱりこうめちゃくちゃ歌詞が多い人もいっぱいいるじゃないですか。もう全部説明してるって言うか。僕は、何かこう歌詞はできるだけ説明したくなくて、意味がわからなくてもいいと。けど、リズムは素晴らしい、素晴らしくなければいけない、っていう考え方なんで。その、非常に評価されるまで時間かかってきた人なんですけど(笑)。わかりやすくなかったんでね。映画とかも僕そうなんですけど、説明がないものほど好きと言うか、想像力をやっぱりちゃんと自分がついていく、想像してついてきてもらうっていう表現がやっぱり好きなんですよね。だから、昨今の映画とか見てると、もうパッと見もう全部説明してるっていうか、全部わかっちゃうとかだから、なんか漫画的だなって思って。漫画って、こうなんか最初に説明があるじゃないですか。説明があって、ディティールが分かって物語が進んでいくけど、映画ってそうあるべきなのかなと思ったりもするし、音楽も、今この瞬間のことをただ的確に説明しても、それは音楽として、僕がやりたい、サカナクションとしてやりたい音楽としてはちょっとその違うものと言うか。全部背中を押したいわけじゃないっていうか。押したいわけでもないし、直接的に背中を押してるわけでもないし、直接的に励ましたいわけじゃないと。だから、説明し切らないっていうことが、非常に我々にとって大事かなって思うんですけど。なんか『ピントが後ろのソファーに行きがち』って書いてある(笑)。確かに。なんで後ろの椅子にピントが行くんだろうね。別にいいんだけど、僕にピントが来なくてもね。

08.Aoi

じゃあ次の曲に行きましょうか。もう早く終わらないとみんな帰るの遅くなっちゃうからね。なんかちょっと『YouTube Liveやりたい』って言ったら大事になっちゃったからね。人、多いもんね。次じゃあ「Aoi」という曲です。こちらは、サカナクション的には非常に良く出来た曲だなと。テーマはNHKのニュース番組の、スポーツコーナーのサッカーテーマ曲か。ちょうどワールドカップか何かだったかな?ワールドカップの前の年だったかな?で、そのサッカーコーナーの曲を作って欲しいっていうオーダーがあって、我々非常に研究して、演奏している時に、サッカーの試合見ながら演奏して、したよね?モニターにサッカーの試合出して演奏したよね?とかやったりして、楽曲の頭、これ合唱から始まるんですけど、この理由としては、高校サッカーの『振り向くなよ 振り向くなよ らららららら~』っていう曲*22のイメージで行こうと。あれは合唱で始まるから。あの雰囲気を、ロックで、我々らしく、エモく行こうと。で、当時日本のユニフォームが、今もか、青だったから、『青い』っていうのと、若い『青さ』っていうのと、世代交代のタイミングだって言ってたから、『絶好の世代』というキーワードを使って、サッカーの感じと、我々の青いエモさっていうのを織り交ぜて、歌詞を書こうと。で、楽曲としてはそういう『振り向くなよ 振り向くなよ』の世界観を少し出して行こう、みたいな感じで制作していったんですね。なので、『青さ 思い出せば また見えた 新しい姿の行く末を』。ここね、俺歌ってないから歌詞あんまり覚えてないんだよね(笑)。ここ俺歌ってないから。ここ俺はね、『手を上げろ!』って言ってるだけだから。今四十肩で手上がんないくせにね(笑)。『お前が手を上げろ!』って言われる。今ならね。『青さ 思い出せば また見えた 若いあの姿と海の音 嗚呼 深く青いという絶好の世代で 痛いほど本能で踊って 青さ 紙一重の危うさよ それは鮮やかさと切り捨てた 切り捨てた』。ここはね、寺山修司の感じをちょっと僕はね出してたんだよね、当時。大好きだからね。『嗚呼 深く青いという絶好の世代で 痛いほど本能で踊って 青いという劣等感 捨てて 痛いほど本能で踊って』。これいいですね、ポジティブですね。『君はその若さを抱えては いつか通り過ぎて変わるだろう 変わるだろう 探すだろう その色は 深い青 嗚呼 深く青いという絶好の世代で 痛いほど本能で踊って 青いという劣等感 捨てて 痛いほど本能で踊って』ということですね。じゃあちょっと「Aoi」を、ちょっと聴いてみましょうか。

これなんか、ブロック・パーティー*23のドラムの音をちょっと研究してたよね。だからガムテープでめちゃめちゃドラムセット全部留めて、ミュートしてたりとかしたよね。このギターの音も結構その辺の時代の、ブロック・パーティーとかバトルス*24とかあの辺の感じだよね、狙ってたのは。この裏でうっすら入ってるエレピの……ピアノの音と、エレピのループっぽいやつが結構効いてるんだよね。柔らかさを出してるんだよね。この裏でうっすら鳴ってる音ね。『ババババ』って跳ねてるやつ。この辺は、なんかよくあるギターロックの、ギターロックバンドとは違いを付けようっていうので、僕らがよくこういうロックサウンドを作るときに意識してるのは、インディーズ感っていうか、ロンドンインディーズの感じはどれぐらいギターサウンドとして醸し出せるかっていう部分で、音作りであったりを繊細にやってますね。そこがちょっと派手すぎると、やっぱり普通のギター、日本のJロックバンドになっちゃうから、そこをそうさせないためにどうしたらいいのかっていうのは、結構工夫してやってますね。なのでリファレンスにするっていうか、影響を受けるものは、そういうところを結構きっちりと出そうとしている。で、この後もうサビ折り返しが来るんだけど、その折り返しの所ではバグパイプを入れたんだよね。なんかこうエモさを出すために。ここここ。ここバグパイプっぽいの入ってるでしょ?

聴いていただきましたのは、サカナクションの「Aoi」という曲ですね。アルバムの8曲目です。このバグパイプって、本物のバグパイプじゃないよね?バグパイプっぽいシンセの音探して入れたんだっけか。確かそうだよね。これってここにしか出てこないんだっけ?サビでうっすら入ってるんだっけか。ここだけだよね。なんか足りないなーって言って何か色々と足して。本当細かくやってるね俺らね(笑)。すごい頑張ってますのよ。

09.ボイル

じゃあその次の曲行きましょう。この曲!この次の曲はもう、本当もう大好き!大好きな曲!僕がもう。「ボイル」という曲ですね。これちょっと歌詞見てみましょうか。これはね~。これ元々は「神の子」ってタイトルだったんだよね。なんで神の子だったんだっけ?あ、なんか歌ってたのか。『ターララーララララーラ神の子~』って歌ってたんだ。ただ、『神の子ってメッシじゃん』ってなったんだよね(笑)。メッシのこと歌にしてもしょうがないよねーって言って、Aメロを作るのがすごい大変だったんですよ。実はね、宮沢賢治の世界観だったんですよ。最初。『テーブルに並ぶメニュー 僕は悲しみだけ選び取り 口の中詰め込んだ』っていうAメロのこのワードは、僕の中で宮沢賢治の世界観だったんだよな。『テーブルに並ぶメニュー ひとりに慣れたはずなのに まだ探してる』って。でもこの『遠くに 遠くに投げ捨てた夜の言葉よ 遠くに 遠くに忘れていた夜の長さよ』ってこれ素晴らしい、心象風景の言語化だと思いますよ。で、これ僕が歌詞を書く時の私小説みたいな曲なんだよね。だから、その『ボイルする』っていうのは、『ボイル』っていうのは、釣り用語なんですよ。最後に出てくる『ライズ』っていうのも、実は釣り用語で。「ボイル」っていうのは、フィッシュイーター、魚を食べる魚が、他の魚を追いかけてる時のことを「ボイル」っていうんですよ。それを『ボイルしてる』と。で、『ライズ』っていうのは、魚がこう跳ねることを、『ライズした』って言うんですよ。で、僕は言葉、歌詞を書く時に、自分の想像を超えた瞬間に歌詞が完成したと思うんですね。それはどういうことかって言うと、僕は歌詞を書く時に、1曲に対して何十曲分の歌詞を書くんですよ。多いときにはもう80曲とか分の、1曲に対して80個パターン歌詞を書くと。それのAメロBメロとかを、1個目に書いたもの30個目に書いたもの70個目に書いたものを入れ替えたりすることで、全部自分が書いた歌詞なんだけど、自分の想像してない言葉だったり物語になった瞬間に、『言葉が跳ねた』っていう言い方をしてるんですね。『意味が跳ねた』。『意味が跳ねた』っていう。自分が想像してない意味になった。そういう時に『意味が跳ねた』って言っていて、『意味が跳ねて ライズしたんだ 日々ライズしたんだ 日々が』っていう風に最後の歌詞になっていくんです。だからこれは僕の歌詞を書いてる時の世界観です。『荒れてる心と手を繋いで書き続ける 能率の次 論理 忘れた心で書く 終わらないと焦りが出る 広い沖の船の上で眠る僕の心 漂う霧みたいな不安を 黒い鉛筆かペンでノートに自由に書く』、ここ実は僕イラストレータ*25で書いてるんで嘘です(笑)。『情景描写 嘘の意味や不安になりそうな夜の音 いきなり告げられる深い別れとか泣いてるだけの君 言葉で今繋げるから』。非常にライブでもいい曲なんでね。ちょっと聴いてみましょうか。聴けばわかる。聴こう。 「ボイル」。

もうこの時点で良い曲だもんねぇ。この時点ですごい良いよぉ。このリズムがいいよね、言葉の。この溜息は、僕の希望で残したんじゃないんだよね。浦ちゃんが残したんだよね。レコーディングエンジニアのね。

聴いていただきましたのは、サカナクションの「ボイル」ですね。これはいい曲だなと思います。やっぱり自分の曲が自分にとってすごい好きな曲であるっていうのは、こんな幸せなことないよね。本当に好きだわ(笑)。だってもうなんか自分が作ったような感じしないもんね。やっぱなんかサイコパスなのかな。わかんなくなっちゃってるもん。だから、こういう風に楽曲解説するっていうのもさ、なんかどこかなんか自分のものじゃない気がするからできてるのかもしんないね。本当になんか自分のものだとなかなかできない感じするもんね。時間が経ってるからかな?なんか今コメントでも『こんな解説とかするべきじゃないんじゃないか』みたいなのもあったりしたけど、僕はね、こういう時代だからこそなんかやるべきかなとも思うし、好きで好きでしょうがないんだよね。自分の曲が(笑)。もうしょうがないから。もう自慢したくてしょうがないんだよ、みんなにね。あと、こういうプロセスって言わないと、埋もれていくもんね。だから言っていくのがいいのかなって思うんだけど。まああのね、本当聞きたくないって人は離れてもらえたらいいかな。

10.映画

じゃあ次の曲行こうか。「映画」。次の曲は。10曲目「映画」ですね。これは、ザッキーと俺が二人で家に残って、みんななんかリズム録りかなんかしに行ってる時に、ザッキーと俺が二人で家に残ってて、1曲作らなきゃいけないってなって、カップリング用に。ミュージックのカップリング用に、だ。で、ザッキーが適当に弾いてる中に、俺が適当に歌詞とメロディーを歌ったそのまんまのを、ミュージックのカップリングに収録したんですよね。それは歌詞が全然違うと。サウンドも全然違うと。それを、アルバム用にリアレンジしたのが、この「映画」という曲で、レコーディングしてた僕の部屋のコップを洗ってる音とか、それを全部サンプリング、バイノーラルでサンプリング録音したものを切り刻んで、楽曲制作したから、映像のような、映画のようなサウンドってことで、「映画」っていうタイトルにしてます。これも非常にいい曲だと思いますよ。聴いてみましょう。

これすごいバイノーラルだから、結構音がすごいリアルだよ。これバイノーラルを利用してるのも、結構コーネリアス*26の影響も大きいですね、我々的には。ちょっと横の声で今ドキッとした人いませんか?今ヒグマの声ですよ。パッと聞こえたの。これって俺家で録ったんじゃなかったっけ、歌。歌ね、iPhoneで録ったんじゃなかったっけ。これ、iPhoneで録音した声ですね。この後来る電車の音は、今は亡き小田急、下北沢の小田急線の線路の音です。この『上行く日々は 上行く日々は目隠しされた渡り鳥だ』っていうのは、やはり我々この時に人に知られていくことの恐怖感みたいなものがすごくあって、やはり音楽以外の技術を磨かなきゃいけないみたいな状況に追い込まれたことに対して、不安定さがあったんですね。それをなんかこう多分僕が無意識にこれはもうそのまま歌った歌詞だから。ほぼ直さず。表現されてるんじゃないかなと思います。あとこう水の中から上を見上げてる、っていう。海の底から上を見上げてるって感じに見えますね。

聴いていただきましたのは、サカナクションの「映画」ですね。ああいい歌ですね。これも非常に。そろそろ皆さん眠たい顔になってきたんでね、サクサク行こうかなと思いますよ。

11.僕と花

次は「僕と花」という曲です。これはドラマ初めてのタイアップ曲ですね。えっと、『34歳で医者になった僕』だっけな。っていうタイトルのドラマの主題歌ですね。水川あさみさんと初めて会った時かな。初めてのドラマ主題歌ということで、どういう曲にしたらいいのかっていうのは僕的には気合を入れて作ってたんですけど、そのなんかいろいろと勉強になった曲ですね。でもグルーヴはバッチリな曲で。ミュージックビデオも、今回のオンライン、アダプトONLINEで全曲ミュージックビデオ生ライブみたいなことをちょっとやろうとしてるけど、それに通ずるようなミュージックビデオ生配信みたいなのをやった時の、Ustreamでやった時ね。とかチャレンジした時の。37歳か。『37歳で医者になった僕』っていうドラマの主題歌ですね。なので是非、ちょっと聴いてみてください。これすごいバッチリな曲です。歌詞ちょっと見てみましょう。『僕の目 ひとつあげましょう だからあなたの目をください まだ見たことのない花 新しい季節を探してた』。すごいこう、なんかこう……性格のいい男子が書いた歌詞みたいな(笑)。ね。すごいあの大衆に対して、上品に書いた歌詞ですね。トゲがありながら上品に書いた歌詞です。聴いてみましょう、「僕と花」。

めちゃめちゃ丁寧にグルーヴが構成されてると思います。アレンジ的にも。このモッチのギターミュートのグルーヴをちょっと聴いてみてもらえたら。これよーく、ここの歌詞すごいですね。『テーブルの上 重ねて置いた本に 名前も知らない花を挟んでた』。なんて好青年な(笑)。『そんな男の子だったか僕は!?』みたいなね。媚びてますねー、ドラマに。偽造してますね、自分を。

聴いていただきましたのは、サカナクションで「僕と花」ですね。これ、スマスマ*27とかに出てたよね、この時ね。あの、本当につらかった。やっぱりテレビに出るって言う事って、我々的にはやはり、その非常にまだ慣れてない時で、なんかこう知られるってどういうことかなみたいなこと。なんでかって言うとさ、僕らやっぱり東京に出てきたのは30歳ぐらいで、デビューしたのも26、7とかだったから、ある程度もうその田舎者としての人格であったり、その美しさを感じる感覚みたいなものは田舎で形成された上で東京に出てきたから、その馴染み方みたいなものに対する粘度みたいなものが、やっぱりちょっと固くなっちゃってたんだよね。そういう上で、いきなりこう何て言うかな知られちゃったから。知られたことによって、知られ続けなきゃいけない状況になるって言うことに対して、すごく恐怖を覚えた時だったんだね。だから今までテレビで見てたSMAPの人たちが目の前にいるなんて、ディズニーランドですよ!行ったことないけど。ディズニーランドみたいな感じじゃないですか。だから非常にね、なんかその現実とアンリアルの境目がわかんなくなったことによって、表現手法がどんどん変わっていったかなっていうのありますね。あとこのアルバムリリースした直後、本当にね、山上さん。俺ぶっ壊れちゃったもんね。ザッキーもだけどさ(笑)。本当になんかもう頭おかしくなっちゃって、なんかこう変になっちゃったもんね。でもまあ、それを「新宝島」で帰ってくるっていうドラマもあるんですけど。非常に苦しかったなーっていうこと覚えてます。

12.mellow

じゃあ次の曲聴きましょうか。じゃあ次「mellow」という曲。これもねぇ、これは本当に難しい曲。これはあのライジング・サン*28のムーン・サーカス*29っていうステージがあるんですよ。僕ねずっと売れてない頃に、売れてない頃っていうかデビューする前だよ。ライジング・サンのスタッフとして長年働いてたんですよ。で、ムーン・サーカスの担当で、夜よくいたんですけど、なんかそこで遊んでた時の雰囲気っていうのを、なんかこう曲にしたいなっていう感じだったんだよね。で、メロウな感じ。で、これ演奏的には非常に難しい曲で、この曲作ってた時は実は浦本さんが、夜遅くて愛美ちゃん帰ってたから、浦本さんがベース弾いてくれて、グルーヴ作って入れてたんだよね、最初。で、なかなかやっぱりね、こういう曲を生演奏でしっかりとプレイしてグルーヴを出すっていうのは、めちゃめちゃ難しい。けど、曲としてはめちゃめちゃいい曲だよね。『絵になるよう 絵になるような夜 絵になるよう 絵になるような君 絵になるよう 絵になるような夜 探したよ 夜の音』。で次『手の鳴るほう』なんだよね。で、『手の鳴るほうへ行く 手 繋がったまま 踊る君は流星』だからね。はー、カッコいいね。『クラップ鳴って踊る 土曜のダンスホールは まるでスローモーションだった まるで君は夜の海月』。はー、おしゃれー。『クラップ鳴って踊る 土曜のダンスホールは まるでスローモーションだった まるで君は夜の海月』。はー。聴いてみましょう、「mellow」。

これサンプラーでやったんだっけ?手弾きだっけ?なんかこの、ここのミュートが結構重要だったよね。これ、ノリ、グルーヴとしては、少し後ろなんだよね。なんだけど、後ろに行き過ぎると歌が前に行き過ぎるっていうか。難しい曲です!この曲ね、カラオケで歌う人は多分いないと思う(笑)。けどアドバイスすると、あんまりノリを突っ込み過ぎずに、後ろに行き過ぎずに、頑張って耐える(笑)。でもカラオケのオケは多分こんなグルーヴィーじゃないよね。ここから上がっていきます。この超低音のサイドチェインコンプ。キックに対して、キックが鳴ってる瞬間に他の楽器がグンとレベルが下がる。で、出たり引っ込んだり出たり引っ込んだりする。これが、さらにメロウな雰囲気を出すよね。揺れてる感じ。

聴いていただきましたのは、サカナクションで「mellow」ですね。これサイドチェインコンプ最後にグーンと掛ける……掛けてたね。これなんかすごいこうライブだとサイドチェインコンプって掛けれないんですよ。掛けれるようになったのか、今は。でもそのあれかキックに引っ掛けて掛けてんのか、ライブも。

浦本さん)あー、えーっと……まぁキックのタイミングで全部打ち込んで、生の楽器に掛けてる。

掛けてんだ。当時はその技術がなくて。我々は、ボリュームのレベルを書いてたんだよね。キックのタイミングでボリュームが下がる、で帰ってくる。っていうのを、オートメーションで書いてやってたりとかして、結構繊細なことをやってましたね。今は浦本さんがレコーディングエンジニアもやってくれてるし、マニピュレーターもやってくれてるから、色んな技術が出てきたけど、当時は愛美ちゃんがマニピュもやってベースも弾いてたから、やっぱり色々と手が足りなかった部分とかを、今は大分クリアしてやれるようになってきたかなって感じ、ですね。今ね、横で話してるのはレコーディングエンジニアの浦本さんです。はい。

13.ストラクチャー

では早速次の曲行きましょうか。「ストラクチャー」ってこれは、歌詞ない。あ、無いよね。あれ?歌うっけ、これ。あ、『らーららーららーらーらーららー、らーららーららー』だ。これは、僕が作ったんだよね。頭のギターの音もこれ、iPhoneじゃなかったっけ。なんとなくデモをバッって僕が作って……作ったんだ。これはなんか収録するつもりじゃなかったんだよね最初ね。なんか……なんとなく作ったんだよね。そしたらいつの間にか収録されたんだよね(笑)。聴いてみよっか。これはね、結構ヴィヴィオ*30とか、やっぱりこうレトロな、あのこの時僕らってすごい色々と音楽シーン全体的に、CDで音楽聴いてほしいのか、配信で聴いてほしいのか、なんかこう『配信じゃなくて、CDで聴きましょう』っていうわけわからないムーブメントがあったんですよ。で、当時は本気で、CDで聴いてもらう方がいいって思ってたけど、僕はうっかりしてた。テクノロジーの進化ってものすごく早いと。だから、そのむしろCDも圧縮されてる音色であるのに、音であるのに、今これからの時代は多分圧縮されてない音をデータでサブスクで聴けるかもしれない、そういう時代が来るかもしれないと。だから、『じゃあいい音って何なのか』って考えなきゃいけないなっていう時に、要するに、自分が好きな音がいい音であると。レコードの音でも、カセットテープでも、好きな音であれば、それはいい音じゃんと。そういう考え方にちょっと移行していったんだよね。僕らはバイナル思考になってたんだよ。で、当時ヴィヴィオとか、カセットテープ録音してそのまま楽曲としてリリースしてた、今はもうワープ*31かな?ワープ出たかな?ワープ出ちゃったかわからないけど。ヴィヴィオとか、そういうサウンドをちょっと色々聴いて、考え方も一緒に学んでいった時の結構吹っ切れた曲ですね。じゃあ聴いてみましょう、「ストラクチャー」。

これほんと僕家でアコギを弾いた音を、切ってサンプル、サンプリングして、ループしてるだけ。これフォー・テット*32の技術もそうだね。フォー・テットもこういうことやってたね。だからこう、生で弾いた揺れてるグルーヴをループすることで、揺れてるグルーヴの繰り返しによって、違うグルーヴが生まれるっていう考え方だね。これって結構皆やりたがらないんだけど、僕は結構好きなんですよ。ちなみに、「ストラクチャー」もこれ釣り用語です。『あのストラクチャーの周りについている魚を狙おう』、みたいな使い方します。これ今俺『ギターで弾け』って言われても弾けないな。忘れちゃったわ(笑)。なんかもうちょっとハットが柔らかくても良かったかもね。これだけ硬いと、やっぱりすごいグルーヴが点になるね。もうちょっとハウスで良かったのかもね。わかりやすいね。めっちゃいいじゃん。もっとディープ・ハウスでも良かったんかな、ね。でもこれくらいでも良いのかな。『ブーメラン飛んでくる感じの音好き』、(笑)。『ホヨホヨホヨン』みたいな感じのやつかな。これか。

聴いていただきましたのは、サカナクションで「ストラクチャー」。あー、なんかこうダンス・ミュージックっていう役割よりも、もう少しその雰囲気を、このアルバムの雰囲気を担ってるよね。この曲はね。すごい、その……素晴らしいなと思いますね。自分がミックスした曲……データはあるよね。どこにあるんだろうね(笑)。僕のパソコンの中にあるか。いや僕これ怖いのが、僕がもし僕の身に何かがあった時に、僕のパソコンのデータを、絶対ビクターは引っ張り出すと思うのよ。やるよね?で、なんか蔵出しみたいなさ。『安部公房の未発売の作品出てきた』みたいな感じで、「無題」とか言って回収しようとすると思うのよ。するよね。だから俺、西君に言ってあるのよ。『僕が死んだらパソコンぶっ壊してくれ』って(笑)。したら『それできるかなー』って言ってた(笑)。伝えてありますけどね。

14.朝の歌

じゃあ最後の曲ですね。これは非常に、「朝の歌」という曲です。最後。「朝の歌」って曲を出してもらおうと思うんですけど。『あとどれくらい僕は深く潜れるだろう 何気なく見た窓の外はまだ夜 あとどれくらい僕は深く潜れるだろう 眠りの中で迷うように泳ぐ』と。『ほら 朝が星や月を食べてく 今 夜がそれに気がつく 表と裏 表と裏 面白くない朝日が染み込む』と。このアルバム自体が、『表と裏』っていうことをコンセプトにしていたので、それを物語る、はっきりとアルバムのテーマに則った、「朝の歌」であると。これはもう裏テーマが色々あるんだけど、それはなんか俺が死んでから色々と多分語られていく話だと思うんで、今はここでは話はしないんですけど、そういう曲がね、実はいろいろあるんですよ。「目が明く藍色」っていう曲もそうだし。この曲もそうですけど。あの非常に僕的にはもう大好きな曲ですね。これ、フジロックのグリーンステージ、レディオヘッド*33の前、トリ前の一曲目にやりましたよね*34。非常に良い曲だと思います。『ほら 朝が海や空を食べてく』と。『今 君がそれに気がつく』という。いい歌詞ですね。『僕らは朝に船を浮かべる いつか そういつかそれで旅する 表と裏 表と裏』という。素晴らしい曲ですね。じゃあ最後にこの曲を聴いてみましょう。

これは、演奏も非常に難しいけど、練習してるからバンドは、この曲はいっぱい。大丈夫。非常に練習したもんね。このグルーヴがね、『ターンターンターンタッツタツッタッタッツッツ』ってこのグルーヴをちゃんとみんなが感じないと、低音の長さ、キックのサステインの長さもグルーヴに影響するし、ピアノも同じ。ベースもそう。だから、そこが全部決まらないと。アコギも、基本後ろ。突っ込むとバラける。だから、繊細な曲。非常に繊細な曲です。聴いてみましょう。非常に良い曲だと思います。「朝の歌」。これは毎週日曜日、隔週日曜日の夕方18時から放送している、NHK FM 『NFR』という、『NIGHT FISHING RADIO』という番組のオープニング曲になってます。それでは聴いてみましょう。「朝の歌」。

レコーディングめっちゃ思い出すね。これアコギとシェイカーのバランスって結構繊細にやった、やりましたよね。聞こえ方というか、立ち位置がね。この曲だけじゃないんですけど、特に特徴的なのは、この曲は歌はダブリングしてます。同じのを2回歌ってるのを、2つ重ねてる。表と裏で。

聴いていただきましたのは、サカナクションで「朝の歌」でございます。『サカナクション山口一郎の解体新書』、楽しんでいただけたでしょうか?

アフターワード

毎週土曜日に、今サカナクションのライブ映像配信みたいなもの、過去のライブ映像配信みたいなものをやっていまして、来週土曜日も『SAKANAQUARIUM光ONLINE』という、昨年8月に行いました、オンライン限定、オンラインのみのライブ。非常に素晴らしいライブだったので、是非それを皆さんに見ていただきたいなと思うんですけども、その後もね、もしできたら配信できたらいいなと思ってます。ただ、YouTubeで配信するのが思っているよりも大変だということが判明したので、ちょっとこの辺を浦本さんとかぶきちゃんが上手く仕組みを構築していただければできるんじゃないかなと思って、またやりたいなと思いますし、まぁたまにね、サカナクションのこのチャンネルからこういう配信とかもポツポツやれたらいいかなと思ってますし、NFパンチチャンネルっていうのがあるんですけども、そちらを今後、サカナクションのサブチャンネル扱いにして、音楽の遊び方みたいな、ちょっとふざけたこととかも色々とね、今後アップしてこうかな、みたいな。『ミュージシャンあるある』みたいなのもね、ちょっとやっていこうかなみたいな話もしてますんで、ちょっと色々とやっていきたいと思います。そしてね、近々ね、僕、とあるゲーム配信者の方のところへお邪魔して、することになりそうです。今度、11月20日21日のオンラインライブのプロモーションということで、行くことになりそうなんですね。その辺もねあの楽しみにしていただけたらなと思います。なんか対決するかもしれないんだよね、サバちゃん。あれ?だよね。もうぶっ倒してやろうかなと思ってる(笑)。もうミュージシャンの意地をかけてね絶対あの倒してやろうかなと思っているので楽しみにしていただけたらと思います。長い時間皆さん深夜1時半過ぎてしまいましたが、遅くまでお付き合いありがとうございました。遅くまでありがとうございました。で、11月もっかいちょっと画像出してもらおうかな。アダプトONLINEという、オンライン限定のスーパーオンラインライブを開催いたします。これはあの生ライブ映像配信になっていて、ライブ会場での配信ではありません。ちゃんとセットを作って、スタジオでの素晴らしいライブをやります。二日間に及ぶオンラインライブで、あの20日はファンクラブ限定、21日は一般でも見れるようになってますが、これ本当にね、全編ミュージックビデオかと思うようなライブになっているのと、あと新曲も5曲ぐらい披露する予定です、初披露になってます!なので、是非このSAKANAQUARIUMアダプトONLINE、2021年11月20日21日の二日間ぜひチケットを購入してみていただけたらと思います!あの本当にすごいライブなんでね、是非楽しみにしていただけたらと思います!是非よろしくお願いします。また来週土曜日、もしできたらまたYouTubeから、こんなハイスペックでできるわかんないけども、ビクターの方がまた来てくれるなら(笑)きっとできるかなと思うんだけど、わからない、わからないですけどね。また『サカナクション山口一郎のサカナクション解体新書』行えたらなと思っております。それではみなさん夜遅くまでお付き合いありがとうございました!また来週お会いできたらお会いしましょう!

*1:Martin Stimming:ドイツのハンブルクを拠点に活動する音楽プロデューサー

*2:江島啓一サカナクションのメンバーで、ドラムスを担当しているほか、DJとしても活動している

*3:プログラミング:DAW等で楽器を打ち込むこと

*4:2008年発売の『NIGHT FISHING』

*5:Logic Pro:Appleが開発するDAW

*6:浦本雅史:青葉台スタジオのレコーディングエンジニアで、サポートメンバーとしてサカナクションのマニピュレーターを務める

*7:草刈愛美サカナクションのメンバーで、ベースを担当している

*8:突く:音量を上げる、という意味の用語

*9:Prophet:アナログ・シンセサイザーのシリーズ名

*10:岩寺基晴サカナクションのメンバーで、ギターを担当している

*11:JONTE' MOANING:アメリカ出身のダンサー・振付師で、モード学園のCMでこの曲に合わせてダンスを披露している

*12:Gold Panda:イギリス・ロンドン出身のエレクトロニック・ミュージシャン

*13:正しくは『鳴く風』

*14:Rhodes Piano:フェンダー社の電子ピアノで、多くのシンセサイザーにサンプリングされた音源が内蔵されている

*15:Myloスコットランド出身のエレクトロニック・ミュージシャン

*16:釣りで使われるリールの一種

*17:DocumentaLy』に収録されている「アンタレスと針」の一節

*18:プロの釣り師で、シマノのリールの開発にも携わっている

*19:The Cardigansスウェーデン出身のバンド

*20:岡崎英美サカナクションのメンバーで、キーボードを担当している

*21:The Buffalo Bunch:ロウ・マンと、ダフト・パンクのギ=マニュエルの弟であるプレイ・ポールによるユニット

*22:ザ・バーズふり向くな君は美しい阿久悠作詞、三木たかし作曲)

*23:Bloc Party:2003年に結成されたイギリスのロックバンド

*24:Battles:2002年に結成されたアメリカのロックバンド

*25:IllustratorAdobeが販売しているグラフィックデザイン用のソフトウェア

*26:Corneliusフリッパーズ・ギターの元メンバーとして知られる、小山田圭吾のソロプロジェクト

*27:SMAP×SMAP:フジテレビ系列で放送されていたバラエティ番組

*28:RISING SUN ROCK FESTIVAL:毎年8月に北海道石狩市で行われているオールナイトイベントで、国内最大級のロック・フェスティバルとも言われる

*29:MOON CIRCUS:2002年から2011年まで設けられていたステージで、レイ・ハラカミケン・イシイなどが出演していた

*30:BIBIO:イギリスのワープ・レコーズに所属するイギリス人プロデューサー

*31:Warp Recordsエイフェックス・ツインなどが所属するイギリスのレコードレーベル

*32:Four Tet:イギリス人ミュージシャン、キーラン・ヘブデンのソロプロジェクト

*33:Radiohead:世界的に高い評価を受けるイギリスのロックバンド

*34:2018年に行われたFUJI ROCK FESTIVALのGREEN STAGEでトリ前を務めたが、トリはレディオヘッドではなくアメリカのヒップホップ・グループ、N.E.R.Dである。2016年に行われたSUMMER SONICのOCEAN STAGE(大阪)とMARINE STAGE(東京)ではトリ前を務め、トリもレディオヘッドだったが、1曲目は「INORI」だった。

はじめに

はじめまして、ユウといいます。以前はBloggerの方でブログとも言えない何かを書いていたのですが、Bloggerは使いにくいうえに、書く内容がブログに書くにふさわしくないものばかりだったので、心機一転、このはてなブログで、自分の好きな音楽やライブの感想なんかを、つらつらと書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。